「うちの親、この暑いのにエアコンをつけたがらないのよね…」
「離れて暮らしているから、夏のあいだ様子がわからなくて心配」
そんなふうに感じている方はいませんか?
私は訪問看護師として、毎年のように夏の暑さで体調をくずす高齢の方を見てきました。中には、あと少し発見が遅れていたら…とヒヤッとした場面もあります。
この記事では、なぜ高齢の方が熱中症になりやすいのか、そしてご家族が今日からできる「夏の見守り」のコツをお伝えします。
この記事でわかること
- 高齢の親が「暑さに気づきにくい」ほんとうの理由
- 訪問看護の現場で実際にあった、ヒヤッとした夏の話
- 今日からできる、熱中症を防ぐ4つの見守りポイント
- 離れて暮らす親を、そっと見守る暮らしの工夫
高齢の親が「暑さに気づけない」のはなぜ?
まず知っておいてほしいのは、熱中症は決して「外で運動する人だけのもの」ではない、ということです。
総務省消防庁のまとめによると、熱中症で救急搬送される方のうち、65歳以上の高齢者が半数以上(およそ6割)を占めています。そして発生した場所でいちばん多いのは、外ではなく「住居」なんです。つまり、自宅にいても油断は禁物、というわけですね。

では、なぜお家の中で熱中症になってしまうのでしょうか。
高齢になると、体温を調節する力が少しずつ弱くなります。そのため、若い頃にくらべて「暑さそのものを感じにくく」なるんです。まわりが「こんなに暑いのに」と思っても、ご本人はケロッとしていることがあります。
のどの渇きも同じです。体は水分を欲しているのに、「のどが渇いた」という感覚が鈍くなり、水分をとるのが後回しになってしまう。これが、気づかないうちに脱水が進む理由のひとつです。
私が実際に伺っている方でも、こんな理由でエアコンを使わない方が少なくありません。
- 昔からエアコンの風が苦手で、あまり好きではない
- 何度もトイレに行きたくないから、水分は控えめにしている
- 「まだ大丈夫」と、暑さを感じていない
どれも、ご本人にとっては自然な理由なんですよね。だからこそ、まわりの気づきが大切になってきます。
訪問看護の現場で見た、ヒヤッとした夏の日
一度、本当に肝を冷やしたことがあります。
ある夏の日、ヘルパーさんから「微熱があって、なんだか顔が赤い気がする」と連絡がありました。まずは冷房をつけて、お水を飲んでもらうようにお願いしたのですが、どうしても心配で、私も臨時に訪問させてもらったんです。
お部屋に入ってみると、その方は発熱し、ゆでダコのように真っ赤なお顔をしていました。熱中症の一歩手前、といった状態です。
冷房は26℃くらいに設定されていました。でも、窓から強い陽ざしが入っていて、お部屋そのものが暑くなっていたんです。設定温度は下げていても、冷房が追いついていなかったんですね。
すぐにお部屋を一気に冷やして、脇の下・首まわり・太もものつけ根に保冷剤を当てました。ここには太い血管が通っているので、体を効率よく冷やせる場所なんです。30分ほどで、体温もお顔の色もいつも通りに戻ってくれて、心からホッとしました。
このとき私が痛感したのは、「エアコンをつけている=安心」とはかぎらないということです。設定温度だけでなく、お部屋が実際に何度になっているかを見てあげることが大切なんだと、あらためて感じた出来事でした。
今日からできる、夏の見守り4つのポイント
「じゃあ、家族は何に気をつけてあげればいいの?」というときのために、私がいつも大切にしていることを4つにまとめました。
1. 「設定温度」より「実際の室温」を見る
さきほどの話のとおり、冷房の設定温度と、お部屋の本当の温度はちがうことがあります。環境省も、熱中症を防ぐために「室温28℃を超えないように」と呼びかけています。
ここで大切なのは、ご高齢の方は暑さを感じにくいぶん、「本人が暑がっていないか」だけで判断しないことです。おすすめは、よく過ごすお部屋に温度計(湿度もわかるもの)を置いておくこと。ただ、ご本人が数字を気にして動くのは難しいこともあります。あくまで、訪ねた家族やヘルパーさんが「今、何度になっているかな」とひと目で確かめるための目安として置いておくと安心ですよ。
2. のどが渇く前の、こまめな水分
「のどが渇いてから」では、すでに体の水分が足りていないこともあります。渇く前に、少しずつ飲むのが理想です。
私が訪問するときは、手の届くところにお茶や水を用意しておくようにしています。ご本人が自分で飲みにくい場合は、そっと声をかけるのも大切な見守りです。
3. 「暑くない?」ではなく、様子を見る
高齢の方は暑さを感じにくいので、「暑くない?」と聞くと「大丈夫」と返ってくることがよくあります。ご家族に気をつかって、「迷惑をかけたくないから」と大丈夫と言う方もいらっしゃいます。
だから、言葉だけをうのみにせず、お顔の赤み・汗のかき方・ぐったりしていないか、といった様子そのものを見てあげてくださいね。
4. 認知症のある方は「操作」に工夫を
認知症のある方だと、せっかくつけた冷房をご本人が消してしまったり、コンセントを抜いてしまったりすることがあります。冷房のつもりが暖房になっていた、なんてことも実際にあります。
たとえば、ヘルパーさんやデイサービスが入ったときに温度を調整して、リモコンはご本人が触らない場所に置いておく、という方法があります。最近は、離れて暮らす家族がスマホから操作できる「遠隔操作できるエアコン」を使うご家庭もありますよ。無理にやめさせるのではなく、そっと仕組みで支える工夫が助けになります。
離れて暮らす親を、そっと見守る工夫
とはいえ、離れて暮らしていると「毎日は様子を見に行けない」のが正直なところですよね。
そんなときに助けになるのが、暮らしの中に「誰かの目」を増やしておくことです。
たとえば、私も安否確認をかねてよくおすすめしているのが宅食(お弁当の宅配)です。お弁当を手渡しで届けてくれるタイプなら、「今日も元気そうか」をスタッフの方が確認してくれます。夏は食欲が落ちて食事がおろそかになりがちなので、栄養の面でも安心なんですよ。
もうひとつが「見守りサービス」。お部屋の動きをセンサーで感じ取って、一定時間動きがないと家族のスマホに知らせてくれるものなど、いくつかタイプがあります。こちらは別の記事でくわしくご紹介する予定なので、ここでは「そういう選択肢もあるんだ」と頭のすみに置いていただけたらうれしいです。
一人で毎日見守ろうとすると、こちらが疲れてしまいます。頼れる仕組みは、どんどん頼っていいと思うんです。
まとめ
最後に、今日のポイントを振り返っておきますね。
- 熱中症で運ばれる方の多くは高齢者で、しかも発生場所は「自宅」がいちばん多い
- 年齢とともに暑さやのどの渇きを感じにくくなるので、まわりの気づきが大切
- 冷房の設定温度だけでなく、温度計で「実際の室温」を見てあげる
- 水分は渇く前にこまめに。様子は言葉より「お顔や汗」で確認する
- 宅食や見守りサービスなど、暮らしに「誰かの目」を足しておくと安心
夏の熱中症は、ちょっとした気づきと工夫で防げることがたくさんあります。
今日できる小さな一歩として、まずはご実家に電話をかけて「そっちは暑くない?エアコンつけてる?」と聞いてみるのはいかがでしょうか。その一本の電話が、大切な人を守るきっかけになるかもしれません。どうか、あなた自身も無理をしすぎず、この夏を元気に過ごしてくださいね。
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